どのコインを使うべきか


「マジックにはどのコインを使うのが良いのか?」という質問をよく聞きます。私の答えは決まって「場合による」です。実際に何のルーティンをするのかを考慮しなければならないのは自明でしょう。特定のギミックが必要で、選択肢がひとつしかないのなら決定は簡単です。でもそのような制約がなく、例えばワンダラーサイズコインを選ぶ場合、ダブルフローリンかアイゼンハワーかチャイニーズコインかポーカーチップかをどのように決めればいいのでしょうか。考える価値のある要素は4つあると思います。どこにウェイトを置くかはあなた次第。あなたのキャラクターや演技スタイルで変わってきます。

1.視認性
若い(とても賢い)モーリッツ・ミュラーは可能な限り最大のものを使うようにしています。使用しているのはワンダラーより2ミリ大きいシルバーイーグルです。彼の場合、理にかなっていると思います。非常にビジュアルなスタイルでは、コインはお金というよりも物体です。観客にとっても、通貨か何かではなく、見えやすいかどうかが重要になります。

2.妥当性
このあいだロンドンに帰省したときに多くのストローリングマジシャンを見る機会がありました。彼らが使っていたのは2ポンドです。その見た目や直径から、デビッド・ロスやミゲル・アンヘル・ヘアが造幣局のコンサルタントをしていたかったことがわかります。ハーフダラーより少し大きく、ワンダラーより厚みがあります。そして金と銀の陰影は鮮やかではありません。でもそれは特定の仕事では完璧な道具になります。ロンドンのストローリングマジックは直接的で自然で即興的です。その場でモルガン銀貨を取り出すとそのフィーリングは壊れてしまうでしょう。1人の例外はブレンダン・ロドリゲスというパフォーマーでした。彼の派手で劇場的でビジュアルな演技では、アメリカの大きいコインが合っていました。

3.プロット
コインと現象を合わせることでマジックの意味はより深まります。どちら側から寄せることも可能です。特定のプレゼンテーションがあるのなら、もちろんそのテーマにあったコインを探せばいいでしょう。ギャンブル系の現象であれば、ポーカーチップがいいかもしれません。逆に、個性的なコインが、プレゼンテーションを示唆することもあります。そのコインが持つ音や色が、あなたの創造性をかきたてることもあるでしょう。

4.キャラクター
考えてみるべきだと思うのは、あなたが使う(コインも含めた)すべての道具はパフォーマーとしてのあなたを物語るものであるという事実です。理想的な世界では、あなたは何を使うのでしょうか。私の「英国紳士」というペルソナでは英国の硬貨になります。現行の通貨ではありません。私が使用しているのはダブルフローリン(130年間も使われていません)かチャールズとダイアナの記念硬貨(流通していた通貨ではありません)です。これらは他のどのコインよりも私のショーの雰囲気に合います。

最後に、一貫性というのも考えなければならないポイントだと思います。演技に使用するコインは一種類であるのが理想です。異なる技法やギミックでは異なるコインが好都合だったりするので、それが難しいことはわかります。でもそれはあくまでマジシャンの視点です。もし本当に魔法ができるなら、ワンダラーからハーフダラーにコインを変える理由はありません。それは「このコインはこのトリック用で、このコインはこのトリック用です」と観客に言っているようなものです。少し辛口かもしれませんが、カードマジックの場合を考えてください。マジシャンは演技中にデックスイッチするために苦労しています。もちろん単に色違いのデックを使うこともできますが、それが適切な行為だとは誰も思わないでしょう。コインマジックでも同じ基準を持つべきだと思います。プレゼンテーションでコインを変えることが正当化できるなら問題ありません。でも変えるための良い理由がないのなら変えないほうがいいでしょう(気づかれずにコインを足したり引いたりスイッチしたりすることは可能です)。私のショーでは、コインをチャイニーズコインに変化させてから元に戻し、見えない袖を移動させ、そして半分をかじります。(観客から見ると)ずっと同じコインが使用されています。

どのコインを使う場合でも、あなたのキャラクターやプレゼンテーションやマジックについて、そのコインがどういうメッセージを持つのかをぜひ考えてみてください。

 

ベン・ダガス

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